最近増えてきたご相談に後鼻漏があります。ここでは体力の程度別に、漢方的にみる原因を解説します。
<実証>比較的体力のある方
鼻水:黄色か白色で、粘り気があって量が多い
鼻づまり:継続的もしくは間欠的にある
その他の鼻症状:嗅覚低下、鼻粘膜の発赤腫脹
全身症状:発熱悪寒、頭痛、咳、痰 など
「肺」という呼吸器を主るところは鼻と繋がっています。風熱邪毒が肺の経絡へ入り、鼻へ鬱滞すると粘膜を焼き、発症すると考えます。
銀翹散、清肺湯、辛夷清肺湯など
鼻水:黄色で濁っており、粘稠、量が多く、鼻腔上部から流れ出し、臭いがある
その他の鼻症状:嗅覚低下、鼻粘膜の腫脹・発赤が顕著
痛み:激烈な頭痛、眉間や頬部に痛みがある場合も
全身症状:喉の乾燥、耳鳴り、目の充血、睡眠不足で夢が多い、怒りやすい など
漢方で「胆」は自律神経を主る「肝」と連携しており(表裏の関係)、胆汁を貯めたり排出したりして消化吸収の一役を担っている他、胆は肝と協同して疏泄(精神情緒の活動を調節したり、気血を通じさせる)作用があります。また胆の気は脳に通じており、胆は決断力にも関わっています。
感情が抑鬱したり、怒り過ぎたりすると、胆は疏泄ができなくなり、気が鬱して火へと変化。胆火が上部を侵犯すると熱が脳へ移り、損傷が副鼻腔に波及して気血を焼灼すると、粘膜を灼いて腐敗させ、鼻水が発生すると考えます。
竜胆瀉肝湯、荊芥連翹湯、竹茹温胆湯など
鼻水:黄色く濁って量が多く、鼻腔からチョロチョロと流れ続ける
鼻づまり:ひどくなると嗅覚がなくなることも
その他の鼻症状:鼻腔内の発赤腫脹、痛み(特に腫脹が顕著)
全身症状:頭が重く痛みがある、体がだるい、食欲不振など
脾胃とは、胃腸などの消化機能を主るところです。普段から酒・脂っこいもの・甘いものを好んで摂取していると、湿熱(ドロドロしたお水に熱が加わったもの)が発生し、それが溜まってくると胃腸の機能を損ねます。
胃腸は食べ物を消化したり水分を運んだりしていますが、その機能が失調すると、必要なエネルギーが作られない上に未消化の汚れたものがたまります。そのために湿熱が上部を蒸し、副鼻腔内に停滞して集まると、副鼻腔内の粘膜を焼灼して損傷し、鼻水が発生すると考えます。
茵蔯五苓散、茵蔯蒿湯など
<実証~中間証>
鼻の症状:症状に波があり、痰や鼻水の形状も様々
全身症状:暑かったり寒かったり、胸や脇腹が張る・痛い、口が苦い、喉の乾燥、排尿異常、汗の異常など、自律神経がバランスを取れなくなった場合の症状が多い
様々なストレスが原因で、肝の疏泄機能に異常をきたし、肝気が鬱結して気滞痰凝となります。鬱から熱や火へと変化して火熱上亢となると、上咽頭や副鼻腔の粘膜を焼灼して損傷してしまいます。
大柴胡湯、小柴胡湯、柴苓湯、柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯、柴胡清肝湯など
<虚証>比較的体力の弱い方
鼻水:白く粘り、鼻がつまる(重い場合も軽い場合もある)、風や冷えなどの刺激で悪化
全身症状:めまい、体の冷え、咳や痰 など
長患いによる体の衰弱、病後の栄養失調などといった原因により肺(呼吸器系)が虚損して肺気が不足していると、防御機能が低下し外からの邪毒に犯されやすくなり、邪が鼻に停留します。この鼻水は潤いを損傷したものなので、白く粘り気があって無臭です。
葛根湯加川芎辛夷+補中益気湯、人参養栄湯、黄耆建中湯など
鼻水:白くて濃く粘る、または黄色く粘稠、量は多く無臭
その他の鼻症状:重度の鼻閉、嗅覚低下、鼻腔粘膜の腫脹がひどい
全身症状:体がだるくて脱力感があり、食が細くお腹が張る、便が緩い、顔色が良くない など
飲食の不摂生、過労、悩みすぎによる鬱結などのために脾胃を損傷し、脾胃が虚弱になると消化機能が失調します。そのために「気(元気)」や「血(栄養分)」などが作られなくなると、鼻は気血による栄養を失ってしまい、邪毒により長期間困窮させられると、粘膜が腐敗して濁った鼻水が分泌されるようになります。また脾が弱く水分代謝がうまくいかないと、湿(汚れた水)がたまり、それが上部に移行すると鼻水となります。
参苓白朮散、補中益気湯、黄耆建中湯、六君子湯、五積散など
喉の症状:痰は粘ついて少ない、時にむせる、喉の乾燥や不快感 など
全身症状:頬の紅潮、手足の中心が暑くなる、精神疲労、言葉に力がない など
肺の水分が不足することによって火がくすぶっていて、それが上咽頭を上炎するために炎症を起こします。加齢で起こることも多く、西洋医学的には治療が困難な場合も。
麦門冬湯、滋陰降火湯、滋陰至宝湯など
喉の症状:黄白色の痰で粘っこいが量は多くない、口が渇くが多くは飲まない、喉の灼熱感や不快感 など
全身症状:くらくらする、かすみ目、耳鳴り、不眠、腰や膝がだるい など
腎(老化を主るところ)の水分が不足したために火を制御できなくなり、上咽頭にくすぶった火が上炎すると、粘膜が損傷し、痰を生じます。加齢で起こることも多く、西洋医学的には治療が困難といわれることも。
八味地黄丸、知柏地黄丸、滋陰降火湯など
後鼻漏の主な自覚症状は、鼻水が喉のほうにおりてきて、へばりついて気持ち悪かったり、咳が出たり。痰も多く、口臭の原因になることもあります。普通の人でも鼻水は喉におりてきているのですが、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎の方は鼻水が粘性をもつため、大変不快になります。鼻炎の増加に比例して後鼻漏でお悩みの方が多くなるのは、当然のことですね。
また子供の咳が続く時、咳止めではなく鼻水の薬で咳が治まることが多々あります。子供は鼻から喉へ鼻水が流れやすい角度になっているので、後鼻漏になりやすいのです。
漢方相談では、まずは後鼻漏の症状がみられるようになった原因や、体の中でどういうことが起こっているのかを漢方的に紐解き、お一人お一人に最適な処方を選んでいきます。
そして、そもそも体のバランスが乱れる原因は、心・食事・運動・休養・環境の乱れ。漢方薬を飲むとともにこれらを見直していくことで、自分の良くなる力をより発揮できるようになり改善への大きな後押しとなります。
不快な症状でお困りの方は、ぜひ一度てんじん堂にご相談くださいませ。
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